第1巻
太平洋に面した人口100万人級の地方都市床主市(とこのすし)に存在する、全寮制私立高校藤美学園(ふじみがくえん)。いつものように教室の外で授業をサボっていた小室孝(CV: 諏訪部順一)は、校門の前で不審者とモメている教師達を目撃する。まもなく、不審者に噛まれた教師は他の教師や生徒を襲うことで、後に「奴ら」と呼称されることとなる生ける屍達を学園内に増やし始めた。孝は友人の宮本麗(CV: 井上麻里奈)と井豪永(CV: 宮野真守)を連れて校舎屋上へ逃げたが、「奴ら」と化した教師に噛まれた永も同様に「奴ら」と化してしまったため、孝はやむを得ず永を殺害する。麗は孝を責めるが、彼がその場を離れようとすると「一緒にいて」とすがり付き、泣きながら引き留め、孝もそれに応えてその場に留まる。その後、麗の父の正へ何とか繋がった電話もすぐに切れて不通となったため、孝と麗は複雑な思いを抱えながら学園からの脱出を目指し、行動を始めた。
天才を自認する高城沙耶(CV: 喜多村英梨)と銃器マニアの平野コータ(CV: 檜山修之)、そして剣術の達人である毒島冴子(CV: 沢城みゆき)と校医の鞠川静香(CV: 福井裕佳梨)と合流した孝と麗は職員室へ入り、皆で一旦休息を取る。しかし、そこで見たテレビのニュースから「奴ら」の件が世界規模のパンデミック状態であることや、それが止まらないであろうと悟った孝達は、家族の安否確認や救出を決意する。やがて、辛くも難を逃れた他の生徒達と教師の紫藤を加えた孝達は、部活遠征用のマイクロバスに乗車して学園からの脱出を果たした。
しかし、家族の元へ向かうことを主張する孝達は、立て籠もりを主張する他の生徒達と対立し始めた。それを見た紫藤は、今後問題が起きないように手を打とうとリーダーへ名乗り出たが、彼との因縁を持つ麗は同行を拒否し、降車してしまった。そんな麗を即座に見限った紫藤に孝は反発しつつ彼女を引き留めようと追うが、その直後に突っ込んできた路線バスが爆発炎上する。マイクロバスと分断されてしまった孝と麗だったが、乗り捨てられたバイクを入手し、別ルートで移動を開始するのだった。
第2巻
バイクで移動中、ガソリン補給のために立ち寄ったガソリンスタンドで暴漢に麗が襲われる。暴漢は「奴ら」と化した家族を手にかけたことから自暴自棄となっており、欲望を剥き出しにして麗をさらおうとするが、孝は移動中に警察官の死体から入手していた拳銃で暴漢を撃退する。麗を取り戻した孝は、脅威が「奴ら」だけでなく生者もそうであることや、自分がこの世界に順応して楽しむようにさえなってきていることを実感するのだった。
その頃、床主国際洋上空港ではSATによる「奴ら」の駆除が行われていた。また、マイクロバス内では紫藤が現実を直視できない生徒達に洗脳紛いの演説を始めるなど、不穏な空間となっていた。ここも安全ではないと悟った冴子達は車外への脱出を決意し、紫藤に決別を宣言する。それを了承しながらも静香には引き留め工作を仕掛ける紫藤に、麗と同じく恨みに似た感情を抱きながら普通に生き続けるべく我慢し続けていたコータは、堪っていた感情を爆発させる。コータが後衛を務めたことで無事に車外へ脱出できた冴子達は、まもなく孝や麗と無事に合流できたが、孝・麗・沙耶の家族が居る御別川を渡った東側へ通じる橋は全て封鎖されてしまっていた。日没が迫る中、静香の友人でSAT隊員の南リカ(CV: 竹内順子)の家が近いことを知った孝達は、そこを今夜の避難先に決めて「奴ら」を積極的に排除する。そして、学園を脱出してから初めての休息を取るのだった。
屋外では、左翼と警察官が衝突し始めるなどの混乱がより一層激しくなり、ひとまず難を逃れた人々も他者を見捨てて屋内へ立て籠もることが精一杯であった。冴子は自分達もそうするべきとの覚悟を孝に諭すが、とある民家の敷地内に救助を求めた父親が立て籠もっていた住民によって刺殺されたために取り残された少女の希里ありす(CV: 竹達彩奈)を発見した孝とコータは、彼女の救出を決意する。南家に保管されていた銃器類を使いこなすコータの援護を受けつつ、孝はバイクを犠牲にしてありすの元へ駆けつけたが、「奴ら」に囲まれて身動きが取れなくなる。しかし、南家に保管されていた軍用車両のハンヴィーで突進してきた静香達によって、孝とありすは彼女達と共に脱出を果たす。これまで、世界が壊れ始めてからわずか1日の内で起きた出来事であった。
第3巻
翌朝、ハンヴィーで御別川を渡りきった孝達は一番近い高城邸への移動中、「奴ら」の侵入防止用に張られたワイヤーに行く手を阻まれて窮地へ陥るが、沙耶の父の高城壮一郎(CV: 中田譲治)が会長を務める右翼団体「憂国一心会」によって救出された。高城邸へ辿り着いた孝達の前では、救出された大勢の避難民も屋敷へ誘導されていたが、まもなく送電や送水といったライフラインが途絶することを見越し、移動の準備も始めていた。
沙耶は孝達全員を集めると、今後の自分達の在り方について、皆に尋ねた。両親がすぐに学園に駆けつけてくれなかったことから自暴自棄になりかけた沙耶を孝が諌める一方、救出活動を行っていた壮一郎達が戻ってきて活動中に「奴ら」と化した部下を斬ったところから一行に不協和音が生じ始める。全ての銃を抱えて飛び出したコータを追った孝は、会の構成員から銃を譲るように脅されていた彼を発見するが、そこへ騒ぎを聞き付けた壮一郎や彼の妻の百合子が現れた。壮一郎に尋問されるコータを孝は仲間達と共に擁護し、結束を固める。その一方、現実を直視できず会の方針に反発し始めた一部の避難民には沙耶が説得を試みるが、全く聞き入れられなかった。コータが冷静に分析した反発している避難民達の心理を素直に理解した孝を、沙耶とコータは「アタシ達のリーダー足り得ている」と賞し、麗と冴子も孝のリーダーとしての素質を認める。
孝達が去った後のマイクロバス内では、全てを掌握した紫藤により蔓延した不穏な空気が男女の肉欲を刺激し、生徒達同士で乱交を始めるまでに至っていた。車外を徘徊する「奴ら」には目もくれず、車内で快楽を貪る生徒達の姿に紫藤がほくそ笑んでいたところ、彼の携帯電話へ連絡が入る。それは、紫藤が高城邸へ偵察に出していた男子生徒の黒上からの手引きだった。紫藤達は、彼の思想に異を唱えた男子生徒の山田を車外へ放り出して「奴ら」に喰わせると、何事もなかったかのように高城邸へ向かった。
アメリカでは大統領を含む政府高官達が「奴ら」に噛まれて政府が混乱へ陥り、航行中の原子力潜水艦が北朝鮮と中国へ核ミサイルを発射する。世界は着実に、破滅へと向かっていた。
第4巻
床主国際洋上空港では、SAT隊員のリカと田島による給油車を使って「奴ら」を焼き払う作戦が行われたが、不意を突かれて田島が噛まれてしまう。田島は給油車もろとも「奴ら」を巻き込んで自爆することをリカに告げ、その場から離れさせた。リカは田島を敬礼で見送ると、彼の最期を背に空港ターミナルへ向かうのだった。
屋敷からの移動準備が進む高城邸へ、紫藤達のマイクロバスが到着した。紫藤は立派な教師を演じて屋敷へ取り入ろうとするが、そこへ駆けつけた麗が紫藤へ怒りの銃剣を突きつけた。県警の重職者である麗の父の正は、紫藤の父の一郎が代議士活動用に持つ秘密資金の出所を捜査していたため、それに対する警告として麗は留年させられていたのだった。麗が「殺す価値も無い」と銃剣を下ろすまでの一部始終を見ていた壮一郎は、紫藤達の異常性を感じ取り、マイクロバスごと屋敷から追放した。
国外では、アメリカに釣られてロシアと中国の間でも核ミサイルの応酬が始まった。やがて、中国の核ミサイル4発のうち3発は日本海上にて展開中だった海上自衛隊の護衛艦2隻、アメリカ海軍第7艦隊のミサイル巡洋艦1隻が発射したSM-3によってそれぞれ撃墜される。しかし、最後の1発を撃墜するはずだった第7艦隊の駆逐艦1隻の全クルーが「奴ら」と化していたため、最後のSM-3は発射されなかった。最後の1発は太平洋沿岸の日本上空で高高度核爆発を起こし、電磁パルスを発生させる。その結果、高城邸では大半の車両や電子機器が故障し、ライフラインも止まった。また、紫藤達の乗っていたマイクロバスが故障によってフォークリフトへ衝突したためにバリケードが開いたままとなり、「奴ら」を招き込んでしまった。まもなく、屋敷の門を「奴ら」の大群に突破された壮一郎と百合子は、部下達や避難民達と共に隣家への避難を決意する。家族救出を最優先する決意を固めていた孝達も一旦は残って戦おうとしたが、沙耶のことを託してきた壮一郎達に背中を押され、沙耶自身も両親の覚悟と自らへの愛情に、旅立ちを決意する。こうして孝達は、対電磁パルス処理がなされていたために難を逃れた水陸両用の軍用バギーカーで高城邸を脱出した。
しかし、電磁パルスの影響で街から音が消えたため、「奴ら」は次々とバギーカーへ群がってきた。孝と冴子がバギーカーに残って囮となり、二手に分かれて移動を開始する。その矢先、公園で子供の「奴ら」を目にした冴子が突如動きを止めた。間一髪逃げ出せたが、その晩に孝と共に神社の本殿へ避難した冴子は、4年前に夜道で男に襲われかけるも怯えた振りをして誘い込むと手にしていた木刀で彼を逆襲したこと、それ以来は明確な敵を得ることや斬ることに悦楽を感じていること、子供の「奴ら」を目にした際にそれがより酷くなっていることを自覚し、そんな自分を嫌っていることを告白する。翌朝、神社から出てきたところで「奴ら」の襲撃を受けた際に「奴ら」への攻撃を躊躇した冴子に孝が理解を示したことから、ピンチを切り抜けた2人の仲は急接近した。やがて、孝と冴子は麗達との合流場所であるショッピングモールへ無事に辿り着く。だが、そこにも既に先客がいた。
第5巻
モール内には数人の避難民と新米婦警の中岡あさみがいたが、避難民達は現状の責任を彼女に押し付けたり口論するばかりで連帯感の欠片も無く、そのうち島田という男性に至っては静香を強姦しようと目論む始末だった。コータの機転でそれらは解決したものの、孝達が旅立ちの準備を行っていた途中で、特別な血漿の輸血を毎週必要とする骨髄異形成症候群を患っていた老婆が倒れてしまう。孝達は1人を救うために危険を冒すべきか悩むが、見捨てることはできず、近隣の病院へ専用の輸血用血漿を入手に向かうことを決意する。孝達からは彼の他にコータとあさみ、避難民達からは田丸という男性による合計4人で構成された一行が、病院へ向かう。
しかし、病院への道のりは何とか順調だったものの、血漿を入手した後には「奴ら」の襲撃に遭い、逃げる途中で田丸が犠牲となってしまう。その上、モールへ戻ってすぐに血漿の入手行動における反省点を洗い出していた最中、モールの敷地内にはあさみへ避難民達を託して床主東警察署へ応援を要請に向かったはずの先輩婦警の松島が、「奴ら」と化して現れた。自らの最期を悟った田丸の懇願に応じて彼を射殺した直後という状況に加え、1人のために1人が犠牲になった事実に追い打ちをかけられたあさみは、パニックを起こしてしまう。モールにも、不穏な空気が満ちつつあった。
第6巻
あさみの様子に今日中の旅立ちを決めた孝達は、彼女の同行をコータに勧めさせる。無事にあさみを説得できた矢先、身勝手にも別の避難民の1人を刺した避難民の少年が非常扉を開けてモール外へ飛び出したため、「奴ら」の侵入を許してしまった。また、その直前には血漿を輸血された老婆と彼女の老夫が「自分達はこれ以上、生き続けられない。生きていれば、それだけで迷惑をかける」と判断し、モールの屋上から投身心中していた。
バリケードを作るも「奴ら」に突破され、避難民達が次々と餌食となっていく中、孝達はモールの屋上に立て籠もって救出を待つ決意を固めた者達と別れ、脱出を開始する。無事にモールの敷地外へ出られると思われた矢先、あさみは非常扉を開けた少年が「奴ら」に囲まれている姿を発見し、島田と共に少年の救出へ向かった。しかし、その過程で島田が「奴ら」の餌食となった上、あさみも退路を断たれてしまう。コータはあさみを救出に向かおうとしたが、あさみはコータ達に生き残ってもらいたい思いから大声を上げて「奴ら」を呼び集める囮となり、警察官としての敬礼と共に人間としての自らの最期をコータに託す。コータは泣きながらあさみの思いに応え、彼女を射殺する。
その一方、モールの屋上に立て籠もった者達にも「奴ら」が迫っていたが、その上空へ電磁パルス対策を取っていたために難を逃れていた自衛隊のヘリコプターが飛来し、「奴ら」を一掃する。救出された者達は自衛隊隊員との会話で、孝達の手慣れ具合に舌を巻くのだった。
第7巻
あさみを射殺したことから、小室家や宮本家への道中に戦闘ストレス反応を発症したコータは「奴ら」を呼び集めるように撃ちまくり、戦いながら死のうと自暴自棄になり始めた。そんなコータの症状を重く見た孝達は、彼の症状を和らげるべく自分達の家を後回しにして、麗の父、正の職場であり銃や弾薬を補充できると思われる床主東警察署へ向かう。しかし、まもなくそこへ到着するという時に、コータがその場での死別を宣言した。それを見た静香はコータへ駆け寄ると、上官の立場になりきって彼を叱咤激励する。コータもそれに応え、何とか回復を果たすのだった。
荒れ果てて廃屋と化していた署の様子に麗は動揺しかけるが、道や駐車場に残っていた無数のスリップ痕から、孝達は生存者の多くが車で慌ててどこかへ避難したことを悟った。それを確かめるため、署内を徘徊する「奴ら」を倒しつつ銃や弾薬を補充しながら最上階の通信指令室へ入った孝達は、非常用バッテリーのお陰で生きていたJ-ALERTを発見し、明後日に床主市でも自衛隊による住民救出作戦が孝の母の赴任先である新床第三小学校で行われることを知る。また、正の職場である公安係室で得られた情報から彼を含む署員達と避難民達が既に小学校へ向かったことも窺えたため、孝達は改めて麗の母である貴理子の安否を確かめてから小学校へ向かうことを決意した。まもなく、雨の降りしきる中を宮本家へ向かった孝達は、バリケードから物資調達に出たまま締め出されていた貴理子と合流し、共に小学校へ向かうこととなった。
その頃、自衛隊による空港での救出作戦は完了していた。その一方、小学校へは紫藤一行が先着していた。